疲れて癒しを求めたら読みたい物語『山の音』(著:川端康成)

  • 2024年1月1日
  • 2024年10月14日
  • 小説
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今回は川端康成の『山の音』を読みました。

作品の紹介と魅力、そして読んで学んだことを中心にお話ししようと思います。

読もうと思ったきっかけ

川端文学はこれまでに『雪国』と『少年』を読みました。
この二つの作品を読んだ印象として、川端康成の作品はやはり芸術性が強いせいかあまり感動できなかったんですよね。

明らかに私の教養のなさが原因なのですが。

で、「もっとわかりたい!」という思いもあって、川端康成の作品をいろいろ読んでみたいと思っていたところ「少年」の巻末で

「62歳、老いたらくの恋。だがその相手は息子の嫁だったーー」

という紹介文に興味を持ったんですよね。

なんで興味を持ったかというと、
ノーベル文学賞作家の川端康成をもっと読みたいと思ったからです。
その奥深さがわかる人間になりたい、と。

で、その中でこの「山の音」を選んだのは、62歳の恋心って正直想像がつかないから。

わたしはまだギリ20代なので、純粋に「60代でもまだ恋するんだ」ってゆう興味と、
そこには人が人に惹かれる心の本質みたいなものが見えるのではないかなという期待から読んでみたいと思いました。

読んでみて思ったこと

その期待は裏切られることはなく、むしろ想像以上に読んでよかったと思った作品でした。

川端康成の作品で初めて没頭して楽しめました。

これまで文学作品に慣れていない人でも、何となくその魅力がわかるんじゃないかなと思えるような印象です。

アラサーの女でも、ちゃんと62歳のおじいさんの心に入り込めました。

この主人公(信吾)が恋をした、息子の嫁(菊子)のことを、信吾と同じように恋心が理解できます。

そして、この物語の最大の魅力は、ただの恋物語ではなくノーベル文学賞作家のさすがの力量で心情と共に風情の表現が豊かなところ。

物語は意外とドロドロしてるんですけど、移りゆく季節の情景に心が浄化されるような、不思議な感情を覚える作品でした。

そんな情景の美しさを感じる文章から純粋な恋心が楽しめるとともに、何となく懐かしい気持ちになるというか、タイムスリップしたような気持ちになるところに、この本を読んでいる間は癒され続けていました。

読んでない時間に「物語の続きが気になる」というよりは、「あ~早く『山の音』で癒されたい」と感じてしまうような。

そこがこの作品の魅力だったなと感じています。

物語のテーマ

とある家族の中に起こる出来事を通して、家族の人間関係が描かれた物語です。

物語から何か学びや教訓を伝えることに重きを置いた作品というよりは、「物語自体を楽しむ」ということに重きを置かれているような印象でした。

そんな中でもいろいろと考えさせられるようなテーマは散りばめられていて、

・死への恐れ
・家族という密な人間関係に生じるわだかまり
・戦争を経験した者の倫理観
・美への憧れ

と、けっこう考えさせられることがありました。

感想:人が惹かれる瞬間とは

物語を通して感じたのは、やっぱり人が惹かれる瞬間とは、自分のことを親身になって思ってくれてるところが垣間見えたときだよなぁ、と改めて感じました。

「息子の嫁に思いを寄せる」ってあらすじを読んで、純愛を想像できますか?笑

純愛なんですよ。
自分が嫁とどうにかなりたいなんて下心はないんです。

ただ、近くにいて、日々他愛のない会話をして、つらいときに寄り添ってあげる。

その積み重ねがあるから、嫁の菊子も最後にはイケメンのクズ夫とは別れを決意したとしても、老いぼれのそのお父さんとはこれからも仲良くしていきたい、という気持ちだったんじゃないかなと、本当にほっこりするよい終わり方だったなぁと感じました。

人生をほぼ一通り経験した人間の、
またふりだしに戻るような純粋な恋に美しさを感じられる、
そんな素晴らしい物語でした。