こんにちは。
今回は久しぶりに遠藤周作さんの小説を読みました。
本屋さんに行けば必ずと言っていいほどに遠藤周作さんコーナーを一通り物色するため、もう文庫化されている作品で知らないものはほとんどないだろうと思っていたのですがまだありました。
見つけた瞬間にワクワクした気持ちで購入しました。
この本との出会い
読んでみようと思ったのはシンプルに裏表紙のあらすじからおもしろそうだと思ったから。
私は遠藤周作さんの『悲しみのうた』が小説の中でも一番好きなのだけど、あれは自分の過去と孤独に向き合う主人公の勝呂の姿がなんとも他人事とは思えず、また誰もがそんな一面を持っているのではないかと気づかせてもらえるからすごく響いたんだと思っています。
あの感動をもう一度味わいたくて、この本のあらすじからまた勝呂に出会えるのではないかという期待から読んでみようと思たんですよね。
遠藤周作さんの表現は相変わらず引き込まれる力があって時間を忘れて読みふけってしまった。
この文章技術はさすがだな~と思いました。
周囲の人とうまくいっていなかったり、自分が理解されていない孤独な気持ちを感じるときにはぜひ読んでみていただきたい一冊です。
あらすじ
物語は、吃音で気が弱い主人公の福本一平という少年が、大人になって日本猿研究所の所員として野生の猿の調査に精一杯取り組む姿が描かれたものです。
一平が動物を好きになったのは自身の吃音があったから。
動物は言葉が通じないけれど心が通い合うような気がするという体験は誰でもあるのではないでしょうか。
猿の研究という道を選んだ一平が、言葉ではなく行動で野生の猿と絆を深めていく姿はこの作品の見どころです。
動物研究に関する知識も綿密に調べられていますから、そのあたりも読んでいておもしろいところです。
幼馴染の朋子との恋の行方や、猿のいる山にホテルを建てたい栄光観光に立ち向かう姿など、見所満載な印象でした。
感想
私がこの作品で一番感動した「解説」でした。
物語のおもしろさはもちろんなのですが、巻末の解説を読んでグッときてしまいました。
なぜかというと、解説を書かれているのが主人公一平のモデルとなった間直之助さんという方だったから。
これまで物語と思って読んできたので、白黒の絵に一気に色がついたような気持ちになったんですよね。
この感覚はちょっとあまり体験したことがなかったので、すごく良かったです。
解説で語られている間さんのご経験に重みを感じることができました。
そして物語の方ですが、やっぱり遠藤周作さんの小説はおもしろい!!
と改めて感じさせていただけた。
とはいえ『沈黙』とかちょっとお堅めの小説はなかなか「おもしろかった!」と言えるほど文章読むのが得意ではない方なのだけど、この作品は気軽な気持ち(?)で読めるのがよかった。
シンプルに「この先どうなるんだろう!」
「朋子はどっちを選ぶの!?♡」
「チンクシャ(←猿)~~(TT)」
と、読んでいる間はすごく感情騒がしく楽しめました。笑
あと、野生の猿が暮らす山にホテルを建設しようとする企業サイドの専務がまたものすごく嫌な奴で、なんとも憎い気持ちになるのは私が女だからかな、、?
そんな、感情の変化が楽しめたことが印象的でした。
またこの作品の最大の魅力だなと感じたのは人の抱えている孤独な感情に、登場人物の思考を通して読者の心に寄り添ってくれるところ。
これは遠藤周作さんの本をいろいろ読んでいて感じることだけど、やっぱりやさしさがにじみ出ているんですよね。
薄っぺらいやさしさではなく、「この状況でその選択をしてしまうのは仕方ないよ。だから自分を責めないで」っていうメッセージが言葉の裏に隠れているのがひしひしと伝わってくるんですよね。
こうゆうのが本当のやさしさだよなあと思います。
夫を隣に眠る夜、心に穴が開いたような気持になる朋子の感情を見て、自分もそんな夜があったな~~と思ってしまったり、
一平の温かさに心地よさを感じながらも加納についていってしまうところとか、
さまざまな登場人物に深く感情移入できる作品ってやっぱりなかなかないと思うので(主に朋子ばっかだけどw)
時代を超えてもここまで私の心に入り込んできてくれる小説に出会えたことをうれしく思うし、やっぱり著者の技術がすごいな~と感心させられた一冊でした。